【IPAチャンネル】海外不動産(東南アジア)の販売トークが10年間進化してない理由(鈴木vol.337)

日本で海外不動産販売セミナーが本格化したのは、2011年頃。東日本大震災や超円高が大きなきっかけとなりました。当時はマレーシア、タイをはじめとする東南アジアの不動産が大きな割合を占めていました。その後、フィリピン、ベトナム、カンボジアなど近隣の新興国も加わり、富裕層節税ブームでアメリカ不動産がブレイクして、今に至ります。

ただ、東南アジア等新興国の不動産販売トークは、2021年の現在になっても、10年前と比べてほぼ進化がないように思います。典型的なパターンは、

1)日本と違って、海外(たとえばフィリピン)の人口が増えて、経済が伸びるという、マクロな話をして、
2)これから伸びる国に不動産を持ちませんか、と言って、
3)その国にある、自分の売りたい物件の、良い所ばかり紹介する

ですが不動産は個別による違いが大きいため、こんなざっくりしたマクロ経済の説明だけされても意味がありません。特に海外不動産のほとんどは投資目的ですから、個別の物件レベルで投資価値や保有価値があることを、ロジカルに説明できなければ意味がないです。しかし現実には、そこまで説明できる会社が、私(鈴木)の知る限りほぼ存在しません。

その背景には、「先進国と違って新興国では、賃貸マーケット、中古売買マーケット、管理サービスがまだ確立途上で、信頼性のある取引データも乏しいから、物件個別レベルで売値の妥当性を判断するのが非常に難しい」という事情があります。「ざっくりトーク」から一向に進化しないのも、データやツールが無い分、致し方ないのだと思います。

ただ、進化したいなら、やりようはあると思います。今よりさらに、東南アジア不動産市場が未確立だった2015~16年に、私はタイとベトナムで、「不動産ポータルサイトのクローリング」と、「現地調査」を組み合わせた、駅力、エリア力調査を行い、売り物件の割高度・割安度を数値化、見える化をする方法を提唱したことがあります。日本で東南アジア不動産に関してこのような取り組みしたのは、たぶん私が初めてだと思います。

今は当時よりもデータが多く、AIが大いに発達してきましたから、それを有効活用することで、東南アジアでも「ざっくりトーク」から脱却して、「バンコクのどの駅の徒歩圏内で、この坪単価なら割安で、賃料水準も妥当」みたいな、不動産としてのまともな説明をできる客観的環境が当時よりは整ってきたと思います。あとは、「やる」だけですが、それには業者側と、客側のレベルアップが必要だと思います。

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