台湾、政権交代前夜

こんにちは、国際不動産エージェントManachanです。現在、家族旅行中。今朝、台湾からタイまで移動し、今はバンコクのコンドミニアムでゆっくりしてますが、今回の日記は、台湾の話題でいきますね。
すでにニュースでご存知かもしれませんが、台湾は1月16日に、総統選挙を控えています。その選挙で、国民党→民進党への政権交代および、台湾初の女性総統「蔡英文」氏の誕生がはほぼ確実視されています(リンク)。その背景について、少し考察してみたいと思います。
 
台湾は、日本と同じく、議会制民主主義をとっています。そしてアジアでは珍しく、欧米に似た「二大政党制」が機能している社会といえると思います。
台湾の人々が、今の日本人と同じ意味で普通選挙権を持ってから、まだ20数年しか経っていませんが、すでに「国民党」と「民進党」の二大政党による、政権交代を何度も経験しています。投票率も日本やアメリカより明らかに高い、7~8割をキープしてきています。
2000年 国民党→民進党(陳水扁)への政権交代
2008年 民進党→国民党(馬英九)への政権交代
そして今年、2016年1月16日の選挙で、民進党への政権交代になれば、今世紀に入って3回目。ちょうど8年毎に政権政党が代わってきたことになりますね。
 
台湾でハッキリした二大政党制になっているのは、「中国大陸」の影響が大きいと思います。狭い海峡の対岸に、台湾と比べて面積200倍超、人口60倍の「中華人民共和国」があり、彼らと同じ言語・文化圏に属している。経済的なつながりも極めて密接。でも政治体制は違うし、軍事的な緊張関係も少なからずある。台湾人からみれば、巨大な隣人のプレッシャーを常に受けながら、
「中国大陸と協調していくか?」vs「台湾独自の路線でいくか?」
これが、台湾社会を運営していく上で一番大事なテーマだし、「政治的な対立軸」でもあるわけです。でもって、今のところは「国民党」が「中国協調路線」、「民進党」が「台湾独自路線」を強調するという、非常に分かりやすい構図…台湾が二大政党の民主制を維持できているのは、もちろん台湾人自身の努力も大きいけれど、「地政学的必然」がもたらした面も少なからずあると思います。
日本の場合は、台湾と同じ文脈での二大政党制が機能しにくい社会だと思います。国際関係で日本に最も大きな影響を及ぼすのはアメリカと中国でしょうが、地政学的に、また国民感情的に、どうしても「親米派」が優勢になるので、外交関係が政治的な対立軸になり得ない。
欧米の二大政党の国では「大きい政府」vs「小さい政府」という対立軸が比較的ポピュラーですが、日本の場合、自公政権も野党も「大きい政府志向」が強く、アメリカの「ティーパーティー」的な政党が出にくい風土でもある…自民党と公明党が連立する限り、どうしても「一強」vs「万年野党」の構図になりやすい。
 
アジアを俯瞰すると、(単純比較は難しいですが…)軍政の影響がなければ「日本タイプの政党構成」が多い印象があります(シンガポール、マレーシアなど、日本と似てるかも…)。台湾のようなハッキリした二大政党制はアジアでは珍しく、いろんな意味で興味深い。
 
ところで、台湾社会に関しては、政権交代で世の中がガラッと変わり、前向きな方向に進みそう…という風にはあまり見えません。すでに経済的には先進国レベルになり、「追いつけ追い越せ」モードではなくなり、むしろ、「グローバル競争のなかで労働者賃金が増えない」、「間もなく超高齢化社会を迎え、年金医療含めて先行き不安」といった閉塞感のなかでの選挙戦、という感じがします。
我々家族の滞在先は、台湾・桃園空港近く、人口37万の工業都市「中壢」。昨晩は賑やかな中壢夜市に行きましたが、選挙2週間前ということもあり、街頭演説、挨拶、ビラまきの光景がみられました。
 
こちらが、「本命」民進党の候補者。シンボルカラーは緑。
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対抗する国民党の候補者。シンボルカラーは青
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あと、二大政党では拾えない政治ニーズがたくさんあるのでしょうか、ミニ政党がたくさん出現しているようです。「いつの間に、いろんな政党ができてるんだなあ」と驚きました。たまたま、「時代力量」(New Power Party)というミニ政党のパンフレットとポケットティッシュを配られたので、ホテルに戻って読んでみました。
台湾の選挙民は、「総統」、「選挙区」、「比例代表」の3つの投票権が与えられるようです。日本と似てますね。ちなみに「時代力量」が、「選挙区」で擁立している候補者は、台北都市圏と台中都市圏の一部のみ。「比例代表」で5%の得票を得て、議席獲得を狙う戦略のようです。
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党の候補者は、ざっとみたところ、女性の方が男性よりやや多く、少数民族の代表、大学教授、弁護士、社会運動家といった顔ぶれが多い。
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党のスローガンは「正義を国会へ」だそうな。掲げる政策は左派好みものが多く、「税制改革」、「年金改革」、「派遣労働の廃止」、「公共セクターによる幼児教育の拡大」、「都市アメニティの整備」等々…今ほどグダグダになってない、1990年代後半頃の社民党を思い出させますね。何となく、
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私はこういう政策を必ずしも好むわけではありませんが、台湾の国情をみる限り、彼らの主張も理解はできます。特に幼児教育の商品化とか凄いですからねえ。もう少し公共に寄ってもいいかもしれない。
 
台湾は日本にとって大事な隣人。親日感情が強く、かつ自由や民主主義の理念を共有する仲間でもあり、いろんな意味で世界にプラスの貢献をしている人々だと思います。2週間後の選挙で政権交代すれば、当然中国にも、そして日本を含むアジア全体にも影響が及んできます。台湾の人々が、これからも民主選挙制度を運用しながら、近隣国とも上手に連携してくれることを、願ってやみません。

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