良質な中国と付き合いたい

こんばんはManachanです。いま、飛行機で日米間を移動中、機内Wifi使ってブログ書いてます。

つい先週は、中国の南京へ出張してました。雄大な長江に育まれた古都。三国志の時代(呉の孫権)から栄え、宋朝、明朝、中華民国の時代に全中国の首都であった南京は名所旧蹟や景勝地が多い。中国のなかでも、観光で行ってまず後悔しない場所ですね。
私が訪れた時の南京は、2月中旬にしては暖かく、梅が満開でした。中国四大梅林のひとつを擁する「明孝陵」(ユネスコ世界遺産)も春の訪れを感じる陽気でした。写真をいくつか。



南京訪問の後は、上海浦東空港経由で福岡に飛んできました。九州地方も2月にしては暖かな陽気で、太宰府天満宮の梅も満開でした。



中国の江南地方と、日本の九州は距離的に近く、緯度も気候も似ていますが、風景写真を並べてみると、方や大陸、方や島国なので、ずいぶん違いがありますね。中国から日本に飛んでくると、「箱庭のようなコンパクトな自然」と「隅々まできれいに整理整頓された環境」に、日本らしさを感じます。中国大陸から続々とやってくる観光客も、日本のそういう風景が楽しみなんでしょうね。
南京のビジネスパートナー、美術や建築、歴史に造詣の深いX社長の言葉を借りると、いま中国人が日本に魅せられるのは、それだけではない。日本でみる数々の風物を通じて自ら(中国自身)を再発見する、そこに日本の奥深さがあり、だからこそファン、リピーターが多いのだと。
例えばの話、中国古来の建築物は、「木だけを使い、釘をひとつも使わない」ものだったようです。その構造ゆえ解体も移築も簡単にでき、皇族の間では南京の家屋敷をそのまま北京に移設することがよく行なわれていたと…
その後、時代は下り、中国大陸の木材資源も乏しくなり、木造家屋の文化や技術は廃れてしまいますが、現代中国人が日本に来て神社仏閣建築をみると、そこに「失われた中国古来の建築物」が眼前に現れ、深く感動すると…
建築物でなく、彼らが日本でみる、人々の礼儀正しさ(礼節の概念は古代中国で生まれ、日本を含む周辺諸国に移出された)、漢字文化(日本の漢字には、中国の唐代、宋代に移入されたものが多く、現代中国人からみて古風な使い方が多い)等々、「今では失われた、古き良き中国」を体感できる、世界で唯一の場所が日本なのだと…
また南京のX社長は、現代の日本、特に文化、学術、娯楽、サービスの発達に対して、心から尊敬の念を持っています。彼が常々言うことは、
「ここ20〜30年、日本は経済的には不振だったし、その間に中国の経済は長足の進歩を遂げたことは事実だ。でも考えてみろ、この20〜30年間にノーベル賞を受賞した日本人の数はどれだけ増えたか…世界の学術文化の進歩に、これだけ大きな貢献ができる国の将来は明るいんだよ」
「いま、アジアのエンターテインメント界で偉大な才能を10人挙げろと言われたら、そのうち5人は日本人だよ。宮崎駿、新海誠、庵野秀明…彼らの創意と洗練に我々中国人も大いに学ばないと」
南京のX社長、まだ30代前半なのに大企業集団を作り上げた、その経営手腕もさることながら、彼のものの見方、考え方にも、大いに啓発されます。
単に「知日派の外国人」という一言では表せない何かが、彼にはある。その日本観には、「東アジアにおける数千年の長い交流の歴史」に対する深い理解がある。それは、単に政治史だけでなく、科学技術や建築、美術、哲学といった分野まで及んでいる。
X社長のような人物が、日本を大好きでしかも尊敬しているという事実は、我々日本人にとっても大きな財産だし、私も彼の日本側パートナーとして、その「スケールの大きな問題意識」に常に応えられる人物でありたいと思います。
中国ビジネスを志して、6年。出会いにも恵まれ、今では多くの「良質な中国人のお客様」と、「良質なお付き合い」ができるようになりました。
日中間の付き合いにおける「良質」とは何か?私は次のように考えます。
「東アジア数千年の歴史文化に関する深い理解に基づく、お互いに対する尊敬、尊重をベースとする関係」
いま、日本と中国の間には、政治的にはいろいろ難しい問題があるのは事実ですが、その現象だけにとらわれて、現代の浅知恵だけで相手を論断するのは、つまらない。
それよりも長い歴史的視野に立ち、お互いの歴史、社会、文化や東アジアにおける関係史を踏まえたうえで現代の課題を考えたいものです。そこから「日中間の良質なコミュニケーションやお付き合い」が生まれるのだと思います。
お互い、漢字を含めて文化の相当部分を共有しているわけですから、それを「学び」に活かさない手はない。例えば三国志の「曹操」だって、漢字を知らなければ「Cao Cao」と音声表記するしかない。Cao Caoには何の意味もないけれど、漢字を持つ日本人なら「曹操」の意味が理解できるわけです。そうした、先人が残してくれた文化遺産に感謝しつつ、今をよりよく生きるために活用したいものです。

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