こんばんは国際不動産エージェントManachanです。ベトナム・ホーチミンを早朝出発、カンボジアは首都プノンペンでの日帰り出張を終え、先ほどホーチミンまで戻ってきました。
東南アジアの地図をみると、ホーチミンとプノンペンは非常に近く、陸路で250㎞しか離れていません。東京~浜松間とほぼ同じ距離です。これだけ近いので、国境超えのバスも数多く運行、イミグレを含めて6時間で行くことができます。東京~浜松間の高速バスが所要4時間プラス、イミグレで2時間みたいな「隣り町」感覚ですね。なお、この区間を飛行機で行くと45分しかかかりません。福岡~プサン間みたいに、上昇して、わずかな水平飛行のあと、すぐ降下・着陸してしまいます。
至近距離にあるとはいえ、ベトナムとカンボジア、あるいはホーチミンとプノンペンの間には、一目瞭然な国力の差、都市力の差があります。
前回(今年3月)は、この二都市間をバスで移動したので、両国間の格差がよく分かりました。ホーチミン市内からベトナム側の国境(モクバイ)までは立派な4車線道路が延々70㎞にわたって続き、常に交通量も多かったのに、カンボジア側の国境(バベット)から先は、プノンペンの直前まで、ずっと2車線(つまり片側1車線の対面通行)道路。特に夜だと、ベトナム側は明るいのに、カンボジア側は街灯も乏しくて真っ暗。
それでも今は、カンボジア側のイミグレ建物もずいぶんマシになりました。10年前のカンボジアイミグレは掘っ立て小屋みたいな粗末な建物だったので、「都落ち感」も今の比ではなかったことでしょう。
そのプノンペンはいま、外資を受け入れて急速に経済発展中。土埃や未舗装の道路も減り、コンクリ高規格道路が次々と完成しています。高層の建物も増え、「市バス」も登場するなど、絶賛グレードアップ中。あと何年で、今のホーチミンのレベルに追いつくかというと・・・「約10年」という声が多いようです。
ホーチミンに長年住んだ方の声を聞くと、「今のプノンペンは、10年前のホーチミンにそっくり」だそうです。逆にいうと、最近10年のホーチミンの歩みをおさらいしておくことで、プノンペンの今後の発展、をある程度予見できるのかもしれません。
プノンペンの新興戸建住宅地・・・人気が高い。
不動産マーケットの面からいうと、プノンペンはホーチミンを10年の時差をもって後追いしているようにも見えます。
10年前ホーチミンは、中間層がまだ薄く、一握りの富裕層と、後は購買力のない庶民が多数の社会、ったそうです。今のプノンペンと似てますね。当時、ホーチミンに住むベトナム人は、高層のコンドミニアムに住む発想がなく、圧倒的に「土地付き戸建」志向だったとか…それも、今日のプノンペン住民と似てますね。今は、外資のお金で高層コンドミニアムがどんどん建っていますが、カンボジア人がほとんど住んでないですもの。
当時のホーチミンは、(庶民は無理でも)中間層がなんとか戸建を買えるほど、地価が安かったそうです。都心距離20km、9区あたりで、㎡単価300ドル前後・・・つまり100㎡の土地3万ドル。上物建てても7~8万ドル。その程度の値段なら、少し裕福なベトナム人なら買えるわけです。「戸建信仰」は安い地価に支えられていたといえます。
しかし、それから2004~08年のバブルを経て、ホーチミンの地価は数倍にはね上がり、中間層が市内で戸建を買うことはほぼ無理になりました。いや、土地付き住宅を買うことはできても、ホーチミンの名のつかない「ビンズン省」とか「ドンナイ省」みたいなアドレスになってしまい、「それなら、土地のない集合住宅でも職場に近い市内がいいや」と考える人が増え、コンドミニアム居住が一気に普及したそうです。
今のホーチミンは、以前より断然、中間層が分厚くなってきましたが、彼らが買うボリュームゾーンは、「ホーチミンの周辺区(8区、9区)あたりの、5~6万ドルのコンドミニアム」のようです。もっと裕福な人なら「土地付きの戸建、タウンハウスやビラ」が視野に入るでしょうが、一般ピープルレベルでは、コンドミニアム居住が基本形になったといえます。
(ホーチミンより所得水準の高い、タイ・バンコクでは、人々の所得する住宅の平均が8~10万ドル。2~3割の人は郊外の土地付きタウンハウスを買えますが、それでも6割がコンドミニアム購入層です。)
プノンペンの地価・・近郊ほど、上昇率が高い。
まだ農業用途に使われている土地は安い。
ホーチミン市南部、実需用コンドにアムが延々と並ぶ
ホーチミン10年の歩みから、プノンペンの今後10年を占うと、どうなるか?
・今は、プノンペンの土地がどんどん上がり、戸建住宅地が郊外に広がっているが、実需向けには、まだ「土地付き戸建住宅」が売れる段階。(ホーチミンの2004~08年の状況)
・数年後、プノンペンの土地代が上がりきって、遠方でないと土地付き住宅が求められなくなると、今度は人々の目がコンドミニアム住まいに向かう。そうなれば、「都心近くの、中間層がお手頃価格のコンドミニアム」が売れる (ホーチミンの2008~15年の状況)
もっとも、プノンペンの状況がかつてのホーチミンと違うのは、「外資が建てた高級コンドミニアムが大量供給されている」点でしょう(ベトナムの場合は、外国人による不動産開発や購入が、これまで厳しく規制されていた)。近い将来、これらが大量に空室になると、その後どうなるのか?ロクな管理もされず朽ち果てるのか?あるいは、カンボジア人の購買力が追いついてきたときに、「お手頃価格のコンドミニアム」として実需転換されるのか?なかなか興味深いですね。