勝負する土地、普通の土地、クズ土地

こんばんは、Manachan@福岡出張中です。今回の日記は国内ねた、「土地の利用価値」というテーマで書きますね。
不動産売買の仕事をやっていると、日本全国いろんな方から、売却や査定の依頼を受けます。売却したい理由の多くは「相続」や「資産整理」ですが、売主様にヒアリングすればするほど、「財産をめぐる一族の確執」をはじめ、複雑な事情が垣間見えます。そして、「相続の現場で暗躍するアパート建売業者」の影も…最近、こんな相談がありました。
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立地:千葉県流山市、東武野田線某駅から徒歩2分
地積:約80坪(セットバック後、約75坪)
用途地域:一種住居
建ぺい容積:60/160
地勢:平坦、整形地、接道約15m
売却希望価格:3500万円
売主様意向:売却するか、或いは収益物件を建てて賃料から生活費を捻出するか、両パターンを検討したい。キャッシュは乏しいので、後者の場合フルローンが前提。
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わたくしの地元・千葉県東葛地区。東京通勤圏の駅近。商店と住居が混在する雑然とした環境で道路も狭いですが、賃貸住宅用地としての適性は比較的高い土地といえます。郊外の小さな駅ゆえ、商業・オフィスの需要は高くありません。この土地の活用方法、誰が考えても「アパートかマンション」が思い浮かぶでしょう。
そんな土地のオーナーゆえ、当然、アパマン建売業者からアプローチを受けています。私のところに相談に来る前に、結構大手の会社から、こんな提案を受けていたようです。
 
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建物:鉄骨3階建、ワンルーム中心12室
建築外構価格:約10,000万円
諸経費:約1,000万円
満室時賃料収入:約75万円/月
満室時手取収入:約20万円/月 (ローン返済、管理費、諸税等差引後)
融資:諸経費込フルローン、30年 元利均等 1%台後半
備考:10年間賃料保証のサブリース、残債で買い取りも可能。
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「いかにもありがち」な提案ですね。この土地の上で、都市計画・建築基準法上建築可能かつ、フルローンが出る最大限の建物を建てるプラン。建築業者の売上・利益がMaxになります。ただ、それがオーナーにとって良い提案かどうかは、精査してみないと分かりません。ちなみに日本中どこにでもあるような、特色に乏しい鉄骨アパでした(当該土地のすぐ近くに、すでに築古鉄骨アパが数棟建ってましたね)。
私は売主様に、次のようにお伝えしました。
 
このプラン、中長期的な賃貸経営上のリスクは「中~高」だと考えます。駅近なので、家賃設定さえ間違えなければ最初の10年間の入居はおそらく良いでしょう。ただ10年以上経つとその限りではありませんし、修繕費も嵩んできます。また、近隣にライバル物件が多数建ったり、近隣ターミナル駅の空室や賃料下落が波及することもありえます。金利が上昇して収益を圧迫するリスクもあります。
その結果、目論見通りの利益が得られず、最悪手放すことになった際、土地の価値と残債の比率がどうなるかを考えなければなりません。このプランだと、稼働10年後の残債が7500万超、15年後でも約5500万。これに対して土地の価値は現在と変わらないとしても3500万。市況にもよりますが、一般的に土地建物を手放して現金を得ることは難しいでしょう。
であれば、思い切ってダウンサイズして、5000~6000万の、ワンルーム8戸か、1LDKを混ぜて6戸くらいの木造アパ―トにして、10年後の残債が土地値程度になるプランを検討されてはいかがでしょう?10年後以降の賃貸経営に苦労しても、築15年時点で残債も2500万強に減ってますので、3500万の土地値が維持されれば、土地建物を手放しても現金は残る。また身軽な分、金利上昇や空室・家賃下落リスクにも比較的強いし、木造なら解体撤去費用も安い。最悪更地にすれば、建売アパート業者や戸建パワービルダーが市場価格で買うでしょう。
(注記.ダウンサイズすると、当然、賃料収入も減ります。鉄骨アパ12戸プランの手取り20万が、木造アパ6~8戸だと13万円程度になる計算。ただこのお客様の場合、他に戸建をお持ちで、それを貸し出すことで「合計20万」が実現可能なので、土地活用・新築プランは比較的リスクの低いものが良いと思います。)
 
なお、私が上記を提案したのは、流山市という東京郊外ベッドタウンの「身の丈に合った」プランだと思うからです。これが、東京都心近くの収益性高い土地なら、戦略は当然違ってきます。私がそんなワンダフルな土地を得た暁には、容積率目一杯使って、銀行から目一杯借りて「男、一世一代の勝負」をします♪
ところで私は日本国内の土地は、収益性からみて「勝負する土地」、「普通の土地」、「クズ土地」の3つに分類されると考えています。
「勝負する土地」(大都市の都心タイプ):日本中いや世界中の個人・法人バイヤーが狙う一等地。容積率は最低300%、高度利用が進み、中高層建物が当たり前、地価は「一種○○万円」という用語で語られる世界。需要は極めて旺盛で、金融緩和や容積率緩和の時代になれば、地価がモロ上がる「含み益ガンガンお宝土地」。
「普通の土地」(大都市郊外&地方中堅都市タイプ):地元民や個人投資家、戸建・アパマン業者が狙うゾーン。実需・賃貸の住宅用地として十分成立するが、一部を除いて土地の高度利用は進んでいない。容積率の差はあれど結局戸建か低層アパマン位しか建たないので、地価は「坪○○万円」という言葉で語られる。アベノミクスみたいな金融緩和やっても地価は緩やかにしか上がらないが、安定した住宅需要があるため、大幅な下落もしない。「最悪、土地あれば逃げ切れる」世界。
「クズ土地」(田舎タイプ):地元民しか狙わないゾーン。地価は非常に安いが、需要も極めて限られるので、実勢の取引価格が固定資産税評価額以下、最悪値がつかないことも珍しくない世界。長期保有しようにも、将来時点で住宅用地として成立するのか、行政がインフラを供給してくれるのかどうかのレベルで微妙なので、条件が良ければ戸建用地、それ以外は太陽光や風力発電用地として取引される。せっかく不動産相続しても出口のない「負動産」扱いされることが通例。
 
でもって、だいたいの目安としては、「実勢の売買価格」と「固定資産税評価額」の比率で考えています。
「実勢価格」が「評価額」の2.5倍以上→「勝負する土地」である可能性が高い。
「実勢価格」が「評価額」の1~2.5倍→「普通の土地」である可能性が高い。
「実勢価格」が「評価額」未満→「クズ土地」である可能性が高い。
kuzutochi
 
もちろん、個別にみれば、実勢価格が固定資産税評価額以下なのに、ちゃんとした用途が想定され「普通の土地」レベルの土地も少なくないし、またその逆のパターンも当然あります。私思うに、それぞれの土地に最適な利用方法としては、
「勝負する土地」→容積率目一杯使って、高い建物建てて、オフィスビル、レジ、シェアハウス、民泊として運営。収益を最大化する。
「普通の土地」→戸建かアパートを建てて、賃貸経営。築年数建って苦労しても土地で逃げ切れるような安全度の高いプランを考える。
「クズ土地」→早期売却・処分を考える。
 
前掲の事例(流山市)は、「普通の土地」レベルなので、土地の実力に合うと思われる利用方法を提案したわけです。千葉県内だと、勝負できる土地はごく限られ(船橋、柏、津田沼の駅前なら勝負しますけど…)、圧倒的大多数は「普通の土地」か「クズ土地」だと思います。

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