アジア新興国と不動産屋の良心

こんばんは、国際不動産エージェントManachanです。フィリピンを皮切りに、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーと回ってきた東南アジア出張も、いよいよ大詰め、今は最後の訪問国、マレーシアのジョホールバルにいます。
 
東南アジアは、どこへ行っても、経済成長中。人口が都市に集中し、所得が上がり、クルマの所有が増え、どの国の首都も交通渋滞が激化の一途。そして不動産の観点でいえば、都市の中心部や郊外に、プールやスポーツジム、セキュリティシステムを標準装備した近代的な集合住宅「コンドミニアム」に住まうニーズが増え、その一部は、日本人を含む外国人が、投資目的で買っています。
私の主宰する海外不動産投資コミュニティ「アジア太平洋大家の会」でも、ここ3年余り、東南アジアのコンドミニアム紹介セミナーを、日本の各都市で、数多く開催してきました。その圧倒的大多数は、「プレビルド」(Pre-build)という、完成数年前の時点で予約販売される住宅商品です。
 
しかし、やれマレーシアだタイだ、フィリピンだカンボジアだと、プレビルドのセミナーを数多く開催するなかで、問題点もいろいろ見えてきました。
「東南アジアのプレビルドを、果たして、”不動産”と呼んでよいものなのだろうか?」
 
問題の本質は、
・プレビルドなるものが「不動産のかたちをした金融商品」であること

 
プレビルドを買う、ということは、数年後、コンドミニアムが完成する方に賭けるオプション取引」のようなものです。
購入時点に得られるものは「土地建物」ではなく、「数年後、不動産を手にできるかもしれない権利」だけです。完成すれば、晴れて「不動産」になりますので、銀行融資、入居者募集、賃貸管理、リフォーム、売却…我々、不動産投資家の土俵に乗るわけですが、完成前は、そういった営みが、全くできません。
 
しかも、東南アジアの多くの国で、プレビルド物件の完成前転売が認められています。まだ不動産になってないものを「転売」する…それはまさに、本質的には「金融商品の売買」に他なりません。
プレビルドを扱う業者の多くが、不動産業ではなく金融業の出身であるのも、むべなるかな。当然ながら彼らは、「金融業者のセンス」で、プレビルドを売るわけです。
・第一棟目と比べて、第二棟目の売り出し価格が、10%も値上がりました。あなたも、10%儲かりましたね!
そんなことを言ったりします。確かに、金融業者のセンスからすれば、「簿価が10%増えた」ように見えるのかもしれません。
 
しかし、不動産投資家の視点でみれば、デベロッパーが勝手に値付けした売出価格に興味ありません。我々の関心事は、「いま、この物件を売って、実際に10%増しで買い手がつくのか?」だけです。
でもって、物件完成前にデベロッパーの売出価格通りに転売することは、経験上、ほとんど不可能です。なぜなら、
・デベロッパーは、新規顧客に、プレビルドの部屋を全部売らなきゃならない。売れば、販売ノルマも達成できるし、(たっぷり利益乗せて売ってるから)会社も儲かる。
・一方、すでに購入した顧客の物件を転売しても、デベロッパーはほとんど儲からないから、優先順位はうんと落ちる。
・また、買い手の心理として、誰かがすでに買った「お下がり」よりも、ぴかぴか新品の部屋をデベロッパーから直接買いたがる。
そんな状況で、当然、10%増しで売れるわけがないでしょう?完成前だと多くの場合、「買った値段より10%くらい値引きして手放す」しかないのです。
 
晴れて完成しても、その時点で、デベロッパーが後続の建物をガンガン建てて、プレビルドとして売りまくっていたら、自分の部屋、売りたくてもなかなか売れませんね。「需給のバランス」が崩れて、値がつかないのです。デベロッパーが在庫を売り切って、需給が落ち着いた時点ではじめて、「値上がりして売り抜ける」ことが、視野に入ってくるのです。
需給のバランス、購入・売却のタイミング、ライバル物件との差別化…そうした世界は、不動産の賃貸経営で揉まれていれば、身体で理解できるものですが、金融業上がりの業者は、その辺の事情に疎いことがほとんど。
・あなたの購入されたマカティ地区の平均空室率が4%を切ってるから、入居づけは簡単にできますよ。
そんな、マクロなアプローチしかできなかったりする。そこまで言うんなら、あんたが俺の物件に入居つけてよ!と頼んでも、金融上がりの業者の多くは、賃貸経営の経験もスキルもない。
 
ここ数年、マレーシア、タイ、フィリピンを中心に、各業者が何千戸単位のプレビルドを日本人に売りまくった。それなのに、完成後の入居づけや、転売戦略を真面目に考えていない業者がほとんど。
このままでは、私が危惧する、「2016年ジョホール不動産ショック」(マレーシアのジョホールバルを発火点として、夥しい数の日本人オーナーが完成した物件の入居づけも転売もできずに取り残され、社会問題になる)が起こりかねない。
 
私思うのです。東南アジア不動産も、そろそろ、金融屋ではなく、不動産屋の出番ではないかと。
プレビルドが次々と完成時期を迎えて、「金融商品」から「不動産」に変わるいま、不動産屋のセンスやスキル、そして「良心」が、切に必要になってくると思います。
 
不動産屋の良心とは、物件を個別にとらえ、それぞれに最適な入居戦略や売却戦略を考えていくことです。最後に、
私たちは、曲がりなりにも”大家の会”を名乗っている以上、少なくとも賃貸経営の面でお勧めできる不動産だけを扱いたいと思っています。
そして、海外主要都市における不動産の売却・賃貸実績をデータ化し、情報を整備していきたいと思っています。