海外都市の治安と日本人バイアス

こんにちは、国際不動産エージェントManachanです。
普段、不動産という、人々の住まいに関わる仕事をしていると、当然、「治安」に関する人々の疑問や懸念に、答えていかねばなりません。たとえば、
 
・「東京都○○区の治安はどうですか?」
・「神奈川県の○○駅近くに引っ越すことになりましたが、関東は初めてなので、治安や住環境が心配です」
 
等々の質問について、自分はどう考えるか、また人々はどう考えているのか、答えていく必要があります。
 
また、私は海外不動産投資に関する活動も5〜6年やってきており、海外都市の治安に関する質問も日常的に受けています。
聞かれれば当然、私なりの視点でお答えはいたしますが、でも本心を言うと、「俺の言うことなんかアテにしないで、自分で答え探してね…
 
かくいう私も、これから訪れる土地の治安について、人の言うことをあまり参考にしません。治安に関心がないわけじゃないけど、でも「治安に関して、他人の感じ方と俺の感じ方と、当然違うわけだから、聞いたところで自分にとって意味のある情報にならない」と思うからです。つまり、自分で現地を歩いて、体感したことだけが、意味を持つと考えているのです。
 
そういえば、過去にこんなブログを書きました。
http://asia-investor.net/2012/06/12/「治安」を聞いて何になる?/
ところで、海外都市に関する治安情報は、日本人に聞く場合は、日本国内以上に割り引いて考えなければならないと思います。なぜなら、
 
– 海外都市に居住する日本人が、その都市全体の土地柄を俯瞰できるとは限らない。むしろ、日本人が多く居住するエリアに偏った発想をすることが多い。
 
以前住んでいた、オーストラリアのシドニーでも、こんなことがありました。
シドニーは、都心の東側が海、北側と南側が国立公園に囲まれた地形をしており、住宅地は西の方に、延々と広がっています。ざっくり言うと、シドニーセントラル駅から西側の広大な地域に、シドニー全体の4分の3位の人口が集まっています。私も地元民に混じって西の方に住んでいました。
一方で、シドニー在住の日本人は、都心から北側や東側に集まって住んでおり、西の方に住む日本人は相対的に少なかった。
そんな状況で、シドニーの日本人に治安を聞いたら、当然、「日本人バイアス」のかかった情報が多くなります。例えば、
 
– シドニーに住むなら、北か東がいいよ。日本人も多くて治安も良い、
-西の方は治安悪いからやめた方が良い…
 
シドニー在住の日本人の中には、日本人相手の商売(飲食や不動産)をする方々も少なくないし、これから移住してくる日本人を、自らの居住区に誘導した方が商売上も望ましいので、さらにバイアスがかかる。
 
でも、当時の私が疑問に思ったことは、「北や東が安全」、「西は危険」と言ってる日本人の多くが、西部にほとんど足を踏み入れたことがないんです。
西のこと、ロクに知らないのに適当なこと言ってミスリードするんじゃないよ」と、憤っていたものです。
 
西部でも、広大な地域に危ないエリアがぽつぽつ点在するだけで、大部分は暮らす上で問題ないし、シドニーで保険会社の掛け金が最も安い(盗難犯罪リスクが最も低い)地域も西部に多いのですから…
また、日本人向けのシドニー情報で、「治安が悪い」と名指しされた地域ほど、私の目から見てエキサイティングで素晴らしい場所が多いのです。
 
とはいえ不動産価値を考える上で「地域イメージ」は大事です。大した客観的根拠もないのに人々の「なんとなくのイメージ」が、1戸あたり何百万〜何千万円の差になることもあり、それは決して馬鹿にはできませんが、
 
自分や家族が転勤する、移住する、不動産を買う…といった大事な決断をする上では、人々の言うことを鵜呑みにせず、自分の頭で考え、自分の足で歩き、体感することが大事だと思います。

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