こんばんは国際不動産エージェントManachanです。今回は、「海外不動産販売」ねたで書いてみます。
海外(国際)不動産の世界で、私は様々な役割の仕事をします。日本人が海外不動産を買う「アウトバウンド」の領域だけでも、1)「投資家」でありかつ、2)「マーケッター」でもあり、3)「アドバイザー」でもあり、最近は4)「海外物件の仕入れ業者」でもあります。
3)に関しては、日本人投資家向けのアドバイスが多いですが、最近は「海外の不動産デベロッパーや仲介業者」からアドバイスを求められる機会が増えています。たとえば、
マレーシアの物件を、日本で200戸売りたいが、どうすればいいか、Manachanのアドバイスが欲しい
私、こういう仕事やりたいわけじゃないんだけど、とにかく多方面からリクエストが来るのです。世界には、国境を越えた不動産セールス案件がたくさんあります。例えば、「マレーシアで供給する1万戸のコンドミニアムを世界中で売りたい。中国で2000戸売れたから、日本でも200戸くらいは売れるだろう」みたいに考える業者が少なからずいるのです。
でもって、日本人に200戸売るにあたって、誰に頼めば売ってくれるか?その受け皿となってくれる有力な販売会社が日本にはまだありません。結局、話が巡り巡って、私みたいな奴にも相談がくるのです。
私、この種の話は、基本的にはお断りしています。私は「アジア太平洋大家の会」という海外不動産の投資同好会を束ねているだけで、販売会社ではありません。セミナー企画や集客はできますが、ワンルーム業者の営業ノルマみたいに、物件たくさん売る話は生理的に嫌いです。なぜなら、
・日本の海外不動産マーケットは、まだまだ未成熟。業界も投資家も成長途上。
・日本の投資家が海外物件から着実に利益をとって、どんどん豊かになれば、このマーケットは確実に伸びるが、現時点では、まだそこまでいっていない。
・そんな状態で、日本人に海外の物件をたくさん売っても、必ず無理や歪みが出るので、マーケット・業界の健全な発展につながらない。
言い換えれば、「日本人と海外不動産との幸せな関係」がまだ確立されていない以上、業者主導で数を売りまくるのは反対、という立場なのです。それやると絶対に、おかしなことになるから…
思い起こせば、これまで10年近く、東南アジア某国や、北米の某地方都市の物件を、何百戸何千戸と売りまくった業者が、いろんな問題を起こしました。ああいう物件買った人が、ハッピーになることは稀で、逆に入居付け、転売、管理会社探し、登記などに困って私に「レスキュー依頼」してくるケースがはるかに多い。損している彼らが、二戸目、三戸目…を買うことはありませんので、日本の海外不動産マーケットは健全に伸びていきません。
「Manachanがそういうセミナーを企画した張本人じゃないか!」という方もおられるかもしれません。確かに2011~13年頃は、日本中探しても、見渡す限り東南アジアのプレビルドや北米某都市の築古物件を売る業者しか見当たらず、当時の私は、苦悩に満ちたセミナー運営をしていました。なぜなら、「たいていの業者が最初のころは理想に燃えて、海外の良い物件を紹介しようとしていたのに、途中からたくさんの数を売ろうとして、変な方向に走ってしまう」からです。
業者として、たくさん戸数を売りたいのは理解できます。でも顧客サービスが伴わなければ、管理が雑になれば、結果的に大勢の日本人投資家を不幸にしてしまいます。結局私はいろんな業者と衝突し、決裂し、やむなく会員に向けて「注意喚起のメルマガ」を出す、トラブルが起こりそうな都市に海外人脈を駆使してセーフティネットをつくる…そんな日々が続きました。
最近、アジア太平洋大家の会のセミナーは、全体的な傾向として、先進国の大都市や成長エリアの物件にシフトしています。賃貸市場も二次売買市場も整備され、管理会社のしっかりした案件を中心に扱った結果、海外物件から確実な利益を得る会員も徐々に増えてきました。あと数年もすれば、味をしめた会員が2戸目、3戸目、4戸目をどんどん買って、海外不動産マーケット全体が伸びていくと思います。
そういう時代になれば、日本でたくさんの戸数を売りたい海外業者のアドバイスにも乗れるのかもしれませんが、現在はまだ時期尚早。海外物件で利益を取れる日本の投資家層を、フォローしながら大事に育てていく段階、リピーター予備軍をつくる段階だと思います。
今年の標語・・・「一気に売るな、海外不動産」、「少なく売って、まず投資家に、儲けさせよう」。