福岡交通戦争:「貝塚」を制する者、九州を制す!

こんにちは、国際不動産エージェントManachanです。今日は「福岡市」ねたで書きますね。
先週末の福岡出張で、収益アパートをひとつ仲介しました。場所は、福岡市東区の筥松(はこまつ)。福岡市の中心地(博多や天神)から、北へ約4kmという至近距離。最寄り駅は市営地下鉄と西鉄の乗換駅「貝塚」と、JR鹿児島本線の「箱崎」です。ここは、筑前国一宮かつ日本三大八幡宮のひとつ「筥崎宮」(はこざきぐう)の門前町として、1000年以上もの間、栄えてきた場所でもあります。
この一帯は、私が福岡市で一番注目している場所です。なぜなら、
 
・42ヘクタールに及ぶ「九大キャンパス跡地の再開発」の中核エリアである。
・政令都市の都心部でこの規模の再開発は、全国でもほぼ類例がない。
・しかも、博多港、福岡空港、九州自動車道I/Cという「陸海空の幹線交通」が、6㎞以内に全て揃い、追加投資なしにこれらを利用できる。
 
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箱崎・九大跡地の再開発は、福岡、九州のみならず、日本人全体にとっても、大きな意味を持つかもしれません。なぜなら、
 
東京・首都圏が激甚災害に見舞われた際、国家機能を維持するための「首都バックアップ機能」が、この地に設けられるかもしれない。
 
「3・11」を経験し、今後30年間の大震災リスクも高いとされる首都・東京。近隣国との外交関係も必ずしも安泰というわけではありません。首都圏外に緊急時の行政機能を設け、万一の緊急事態の際も日本国が機能し続けられるようにするのは大事な政治課題。
「首都バックアップ」候補地として、関西、北海道(札幌)、群馬、栃木・福島など、各地域が名乗りを上げていますが、福岡市も立候補しており、その用地として「箱崎の九大跡地」が想定されています。福岡最大のウリは、「東京と同時に被災するリスクの低さ」。日本が想定しうる最悪の自然災害である「南海トラフ大地震&大津波」で、東京とともに名古屋、大阪が被災するリスクが想定されるなか、日本海側に位置する福岡はそのリスクとは無縁だと…
また福岡サイドは、「東京が被災した際、アジア近隣各国と機動的に連携できる立地のメリット」も強調しています(もっとも、「朝鮮半島に近すぎる」福岡の立地がマイナス査定される可能性もありますが・・・)。仮に福岡が首都バックアップ都市(のひとつ)に選ばれれば、「箱崎地区」は日本人全体が関心を持つ地域になるでしょう。
 
そこまで大きな話ではないですが、福岡都市圏全体の交通インフラを考えた時に、「箱崎」は大きな意味を持つエリアです。特にフォーカスすべきは、同地区北端にある「貝塚駅」。この駅は、福岡市営地下鉄2号線と、西鉄貝塚線との連絡駅。福岡でも重要度の高い「交通の要衝」のはずですが、その割に、駅のたたずまいは長閑そのもの。
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この貝塚駅、首都圏出身者からみて「ありえない」と思うのが、この駅を境に地下鉄と西鉄が直通運転できる条件が揃っているにも関わらず、しかも30年以上もの間、議論されているにもかかわらず、まだ実現していないことです。
 
これが、貝塚駅の市営地下鉄改札口
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こちらが、同駅の西鉄貝塚線の改札口
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これ、同じ位置で撮ってますので、両改札口は30メートル程度しか離れていません。ホーム同士の距離も、せいぜい50~100m。しかも高低差もないなぜ、線路つなげて乗り入れしないの?・・・遠く埼玉や神奈川の、西武池袋線や東武東上線、東横線、みなとみらい沿線から、誰もが渋谷、代官山、新宿伊勢丹に直通できる東京圏に住む身としては不思議で仕方がない。
福岡市が人口減少中の衰退都市であるなら、追加のインフラ投資が難しいのは分かる。でも実際は、福岡市・福岡都市圏とも、人口増加率では東京圏をも上回る、「日本一元気な人口爆増都市」。特に、貝塚駅のある福岡市東区はじめ、それ以遠の新宮町、古賀市、福津市・・・すべてが人口増加中。日本中が羨む活況なのに、なぜやらないの?
 
ここ30年間、「貝塚駅での西鉄・地下鉄直通運転」という投資をやらなかったツケを、いま一番多く払っているのは、「西鉄」だと思います。そこには、福岡市の2大都心「天神vs博多の争い」というファクターが絡んできます。
天神(福岡市中央区)・・・西鉄のターミナル駅。
博多(福岡市博多区)・・・JR九州のターミナル駅。
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西鉄は、「天神」をターミナルとする通勤路線・西鉄大牟田線や、九州各地とつなぐ天神発着の高速バス網を擁しており、天神地区および沿線の住宅・商業開発を大規模に行っています。対するJRは、「博多」をターミナルとする新幹線やJR鹿児島本線を擁し、阪急や東急ハンズのある「JR博多シティ」運営や沿線住宅開発を行います。一言でいうと、「天神が栄えるほど、西鉄は儲かる」、「博多が栄えるほど、JRは儲かる」という構図になっています。
もし、過去30年のいずれかの時点で、貝塚駅での西鉄・地下鉄乗り入れ・直通運転が実現していたなら、「福岡市東部~宗像~北九州にかけての商圏人口200万を、電車経由で天神に引き寄せる」結果になっていたと思います。なぜなら、
・北九州や宗像に住む人が、博多を経由せず、千早で乗り換える「ショートカット」が実現する。彼らを博多に流出させずに、天神に誘導することができる。

そして、
・貝塚以遠の西鉄沿線(千早、香椎、和白、新宮)の住宅開発で増えた人口を、天神商圏に引き寄せることもできる。
 
こうした、戦略的投資をやらなかったツケが、いま、西鉄に回ってきています。
・2010年代、博多の勃興と、天神の相対的衰退
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そして、極め付けは、
2018年以降、貝塚にJRの駅が新設される
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JR九州は賢いですね。西鉄と市営地下鉄が直通運転しなかったことに付け込んで、貝塚エリアに新駅をつくって、博多まで3駅、約8分(快速停めれば5分)で結んでしまおう。そして将来、箱崎エリア再開発で生じる旅客需要や購買需要を、ごっそり博多に運んでしまおうという戦略。
西鉄も困るけど、市営地下鉄はもっと困るだろうな。ただでさえ利用低調な「貝塚~天神」間の旅客需要の数十%を、JR経由で博多に持っていかれてしまうのですから…かくして、福岡市の東部・北部では、完全に「JR」>「西鉄」の構図が定着してしまいました。西鉄が早い時期から直通運転で天神とつないで、貝塚以北でまともな沿線開発やってれば、こんなことにはならなかったのに…
 
JR九州は、過去5年間だけで、福岡郊外部に「新宮中央」、「ししぶ」の2駅を新設。住宅開発や商業施設誘致で成果を上げています。より都心に近く、再開発で化ける可能性のある「貝塚新駅」設置の効果は、さらに大きなものとなるでしょう。
天神・博多の二極からなる福岡都市圏、その交通網の構造をみるにつけ、「貝塚」は、日本史における「関ケ原」ともいえる戦略的価値を持つはずです。駅は小さいながら、まさに「貝塚を制するもの、福岡を制す。九州を制す」・・・それを踏まえて適切な行動をとったJRが利を得るのは当然でしょう。
 
こちらも、併せて読んでみよう。
福岡サバイバル不動産投資 (2012/5/24)
福岡県糟屋郡新宮町 (2013/4/29)
 
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