私は昔から、日本酒の熱烈な愛好者。それも、地方の無名な酒蔵が職人芸で一生懸命つくってるような酒が大好きです 。今はビジネスや子育てが忙しくてご無沙汰してますが、まとまった時間があれば、わざわざ 新潟県や福島県会津地方まで出かけて、酒蔵めぐりをする程のファンです。
大学時代は、東京西多摩地区で田んぼ借りて友人とコメ作りをしてました。春、塩水選から苗代づくり、手作業で田植えやって、合鴨を飼って田んぼに放ち、夏のあいだ中、草取りして、秋いよいよ収穫。はさ掛けして精米したコメを使って酒をつくり、皆で集まって品評会をやったり、学園祭で皆さんにふるまったりしていました。
学生の酔狂な素人道楽ながら、コメ作り、酒づくりを毎年やってたので、自分なりに、日本酒の味わいがわかるようになりました。大学時代、私は親からの仕送り無しで、肉体労働のアルバイトで生計を立てていたので、経済的な余裕は余りありませんでしたが、それでも、「小鼓」(こつづみ)の純米吟醸が出れば、一日のアルバイト代の約半分、一升瓶3700円という値段しても必ず買って飲んだものです。
「小鼓」は、日本一の酒米「山田錦」を育む兵庫県丹波の地で1849年創業の西山酒造場による代表銘柄。170年間、地元の水、米、素材に徹底的にこだわった酒造りで頑張っている小さな蔵です。世間的な知名度はありませんが、私にとっては昔も今も、小鼓こそ日本一美味しい酒だと思っています。
http://www.kotsuzumi.co.jp/officialweb/products/
私の大学生当時はバブル最盛期でしたが、その頃、日本の米作りや酒造りを題材とした社会派漫画「夏子の酒」が週刊モーニングに連載されていました。和久井映見主演のTVドラマにもなったので40代以上の方は覚えておられるかもしれませんね。
先日、一人で晩酌をしていた時、学生時代に読んだ「夏子の酒」を再び読み返したくなって、メルカリで取り寄せてみました。50歳、国際不動産ビジネスの経営者となった今、読み返してみると、昔とは違った味わいがありますね。
日本酒に対する純粋な愛情から発して、「日本一の酒づくり」を目指して突き進む主人公・夏子の姿と、不動産に対する純粋な愛情から、いま「日本一の世界不動産ソムリエ」を目指すいまの私の姿が、面白いほど重なって、思い切り感情移入できるのです。
そして、「夏子の酒」に描かれた、日本酒や農業をとりまく社会状況は、収益不動産の世界とも、不思議なほど酷似しています。
(夏子の酒)「戦時中、米不足で酒がたくさん造れなくなった時に政策でアルコール増量法が生まれました。そして戦後もそのまま引き継がれ、灘・伏見は大きくなりました。今でも日本のお酒の9割にアルコールが入っています…自慢できることじゃありませんが。ではやめるわけにはいかない。会社がつぶれますからね。」
⇒不動産でいうと、「戦時中、日本の多くの都市が空襲で焼け野原になり、戦後の経済成長や都市集中とも相まって住宅不足になり、官民あげて住宅供給の量的拡大に努めてきました。今の日本は人口が増えず、住宅が余って空家が増える一方ですが、未だに大量供給が続いています。でもやめるわけにはいかない。不動産会社がつぶれますから…」
(夏子の酒)「半分以上もアルコールを入れちゃうのかい。それで酒の味がするのか?」、「しません。だから水あめや化学調味料で味付けします。」
⇒収益不動産でいうと、「新築ワンルームで、収支シミュレーション上の満室時キャッシュフローが年間8万円しか出ないの?こんなもの売って買う奴いるのか?」、「いません。だから節税になるとか、団信つけて保険代わりになるとか言って、サラリーマンに売ってるんです。」
客に損させることが分かってても無理に売ろうとすると、それが嫌で辞める社員も出てきます。
(夏子の酒)「いくら吟醸造りと言ったって、アルコールをぎりぎりまでぶち込んで、付け香をして吟醸酒をつくれなんて、おれは耐えられねえ。」
⇒不動産でいうと、「いくら資産形成だと綺麗事言ったって、ギリギリまでオーバーローン組ませて、二重売契や残高証明偽造までやって客も銀行も騙して買わせるなんて、俺は耐えられねえ」。
本来、買ってはいけない客に、むりやり物件売ろうとして、禁断の方法を手を染める者も出てきます。
(夏子の酒)「もし米ぬかが米であると認められれば、ぬかで造った純米酒もできてしまいます」「おやじは買ったんだ、その悪魔の機械を…」
⇒不動産でいうと、「一物件一法人スキームで複数金融機関から融資受けまくれば、サラリーマンが何億、何十億でも物件買えてしまいます」「弊社は物件売るために、その方法で客にたくさん買わせてしまったんだ…」
そうかと思えば、時折、酒づくりの本質に迫る金言も飛び出してきます。それは、収益不動産の本質にも通じるものです。
(夏子の酒)「酒の原料である米と水は、自然の恩恵なくしては生まれない」「その恩恵は無償の奉仕で酒蔵に利益をもたらしている」「そのことを肝に銘じ、金儲けだけを追求する酒蔵にはなるな」
⇒不動産でいうと、「全ての不動産は、街と人の限りない恩恵を受けて存在している。そのことを肝に銘じ、不動産の価値をプロとして正しく見極め、客を損させないような商売を心がけろ。決して、自分だけ先に儲かろうとする不動産屋にはなるな」
そして何より、酒造りも不動産賃貸運営も、人間の活動ゆえ、関係者の「和」に支えられています。
(夏子の酒)「和醸良酒」、「和は良酒を醸す、ってんだ…」
⇒「 良い不動産っていうのは、入居者、管理会社、オーナーの三方良しによってつくられるもんだ」
主人公の夏子が目指す日本一の酒づくりは、「健康な土」「健康な米」「確かな仕込み技術」「人々の和」が全て揃い、絶妙なバランスで溶け合い、「酒本来の良さ」を極限まで引き出そうとするものです。
酒と同様、不動産にも「本来の良さ」があるはずです。私のイメージは、「魅力的な街」「人々の経済活動」「確かな見極め」「オーナー、業者、入居者の三方良し」 が揃った物件を、「適正価格 」 で提供すること。それを買ったお客様がいつの時点で手放しても損しない買い物をしていただきたいと願っています。
それを愚直にやり続けることで、私は国際不動産の分野で、日本一の会社づくりを目指していきます。