【英国不動産便り】4)老人ホームが投資物件として成り立つ理由

おはようございます、国際不動産エージェントManachanです。先ほど、英国エジンバラからロンドン経由、東京羽田まで、15 時間近い空の旅をこなしてきました。で、休む間もなく、これから成田に移動し、10時間かけて、オーストラリアはメルボルンまで移動します。まだ先は長い。
英国不動産シリーズ4回目は、「10年間利回り10%保証」など魅力的なパッケージで、日本人も含め世界中の投資家が買っている「英国のケアホーム(Care Home)」に焦点をあてて書きます。
ケアホームとは、要は「老人ホーム」です。東京周辺には、暮らし向きに余裕のある老人が、月額30万とか40万とか払って入居する、医療介護機能つき老人ホームが多数ありますけど、それの英国版だと思っていただければ良い。
今回私が見学したのは、英国中部、人口16万人の地方都市ハダーズフィールド(Huddersfield)に完成したばかりの施設と、その近郊シセット(Scissett)にある建設予定地です。
ところで、このハダーズフィールド、素晴らしい場所でしたよ。平坦なイングランドにあっては珍しく、ハダーズフィールド一帯は起伏の多い丘陵地帯。絵画のように鮮やかなパッチワークの緑の丘、点在するポプラの樹…北海道の富良野や美瑛を思わせる美しい景色の連続で、車窓からも歓声が止まない程でした。
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こじんまりとしたハダーズフィールドの街を車で回りましたが、どこみても端正に整っていて、小汚い場所、治安の悪そうな場所が全く見当たらない。民家も大きく立派で、暮らし向きが良さそうでした。
当然ながら、英国地方都市の全てが、ハダーズフィールドのようではありません。雑駁な工業都市やガラ悪い街、寂れて活気のない街も少なからずありますので、ここは例外的に恵まれた「幸福な街」なのでしょうね。
ハダーズフィールド一帯の豊かな生活を支えるのが、強力な産業基盤。ここな古くから毛織物産地として名高く(英国屋スーツの故郷)、大学など教育産業も発達。しかも25km東方には、英国第2位の金融都市リーズ(Leeds)があり、45km西方には英国屈指の産業都市マンチェスター(Manchester)がある。両都市への鉄道、高速アクセスも完璧で通勤も可能姉妹。
日本にたとえれば、「名古屋近郊に匹敵する裕福さと、富良野美瑛の景色」を併せもったのが、このハダーズフィールドなんですね。そういう場所にいま、老人憩いの介護施設ケアホームが続々と建てられています。
私たち日本の視察団9名は、完成済ケアホームを、現地マネジャーの英国人女性の案内を受けながら見学しました。彼女はケアホーム運営キャリア6年。いくつかの現場を掛けもつなかで、ハダーズフィールドは最初から企画に関われるのでやる気満々のようでした。
彼女曰く、施設には比較的元気な老人も、介護を必要とする老人も、認知症の方々も含めて、色んな方が来るので、誰もが寛げて、home(自分の家)を感じられる施設づくりを心がけているとのこと。全館、段差のないバリアフリーで、全てカーペット敷き。談話室、シアタールーム、ダイニング、家族の待合室などの共用施設も充実。庭には植栽を施し、どの窓からも豊かな緑が見えます。
個室は見た目25平米ほどでゆったりつくってあり、全室バストイレつき。認知症老人の部屋は、トイレやクロゼットを混同しないようにはっきりと色分けするなど、細部にわたって配慮が行き届いていました。
 
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なかなかいいじゃん。とはいえ、日本の同様の施設と比べて特別にすごいことをしているようにも思いませんでした。日本各地にある「ちょっと高級っぽい老人ホーム」という印象かな。
現地でヒアリングできた数字関係は、下記の通り、
– 入所者の平均家賃負担額は、週700ポンド(98000円)
– 介護職員の時給は、時間7.5ポンド(1060円)。東欧などから来た移民看護士も多いよう
 
だったら結構、儲かりますね。なぜなら、
 
– 月40万円くらい払える裕福な老人に入居してもらって
– 介護職員には時給1000円ちょっとで働かせてるんですから…
ざっくり計算すると、「運営側が4分の3とって、投資家に4分の1返しても、満室近い稼働なら利回り10%くらい出る」話…なるほど、これなら投資案件として、ちゃんと成立しますね。
地域に、月40万円払える老人が相当数いることが前提になりますが、ハダーズフィールド一帯が「名古屋レベルの裕福度」であるなら問題なさそう。実際、暖かい5〜9月頃に募集開始すれば、入所希望者の確保には苦労しないそうです。
あと、月40万円をまるまる個人負担にしないよう、地方政府から補助金もいろいろ出るそうです。
 
英国のケアホーム…なかなか良くできた不動産投資商品ですね。日本でも似たようなもの、つくれるかな?たぶん、以下の理由で難しいと思います。
-金利環境…日本は安い金利で資金調達できるので、投資家に8%とか10%のリターンを返すことに、事業者のインセンティブが働かない。
-経営環境…日本の老人ホーム、介護施設で、リターンを返せるだけ儲かるところは少数。健保の点数制とか、都市部の土地取得コストとか、耐震基準をクリアした建物を作らなきゃならない等、いろいろな要因がある。
 
その点、英国は地震ないし、土地が安い割に住民が裕福な地域が結構あるし、それに何より、金利が高い(ケアホーム建てる際の資金調達金利が6〜7%だそうで…)。消費税率も20%とかあるので、地方政府も補助出せたりする。そういう社会経済の土壌があって、英国でケアホームという不動産投資商品が成り立つんでしょうね。
ケアホームのリスクって、何だろう?将来、ケアホーム過剰供給になって老人取り合いになったら困るけど、それには相当な時間がかかると思うし…あと、ローカルな老人サービス需給の問題なので、EU脱退みたいなマクロ経済の話とも余り関係ないし、
 
思うに、「事業運営会社の倒産」と、「法規制の変更と、それによる追加投資で利益が圧迫される」ことが、当面想定される最大のリスクのような気がします。でも将来はどうあれ、いま「10年間10%保証」みたいな商品を買ってしまえば、その10年間のリスクは会社倒産位に限定されるので、売ってから計画倒産みたいな悪質な業者の案件でなければ、相対的にみて低リスクの商品だと思います。

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