前編の続きです。今回も、「久々にボルテージの上がる日本不動産の話」を目指して書きます。
前回は、「観光や国防という特殊事情で石垣島の賃貸需要が増えている」ことを書きましたが、いくら入居者が増えても、それ以上に賃貸住宅の供給が増えてしまえば、我々大家にとって面白い話にはなりません。
・需要>供給なら、全ての賃貸物件の賃料が上がる
・需要<供給になると、競争力の落ちる物件の賃料が一気に下がる
それが、賃貸経営の宿命ですよね…
賃貸住宅の過剰供給が、いま日本中で問題になっています。たとえば、私の実家は千葉県の柏駅から4kmほど離れた、まだ農村風景の残る新興住宅地にありますが、その周辺は地主が建てた安普請アパートの数がとにかく凄い!田畑ばかりの不便な場所にアパート建てて一体誰が住むんでしょう?「いい部屋ネット」の入居者募集ノボリがそこら中にはためく風景が、ちょっとシュール。
私は4年前に不動産業者になり、それこそ、地主系アパート乱立で有名な横浜市郊外や埼玉県北部、愛知~岐阜方面、栃木~福島方面、九州や北海道まで足を伸ばしてますが、全国どこでも、賃貸木造アパートがすでに不必要なくらい建ち、しかもどんどん増えてて驚きます。
日本国内で、大手の木造賃貸アパート業者が進出してガンガン建ててる最南端は、今のところ沖縄本島であるようです。それ以上南の離島になると、人口最大の石垣島でさえ5万人程度でマーケットが非常に小さく、かつ、建材の輸送コストもかかるので、さすがの彼らも組織的な進出はしていません…かくして離島部は、見渡す限り地元建築業者が支配する世界です。
【石垣島の賃貸住宅…見渡す限り空室がない!】
沖縄の離島は観光地として優れているので、リゾートやホテルを建築する目的で本土の業者が多数入ってきています。でも彼らのなかで、事業計画通りに建設できた事例は稀。「沖縄は鬼門、金食い虫」という嘆き節も方々から聞こえてきます。それには、いくつかの理由があります。
・農振(農業振興地域)指定を外すのが至難の業。
・本土資本主導の大規模開発に対しては反対運動も強い。
・いざ建築許可がでても、今は建築費高騰に加え、島外からワーカーを導入するコスト(交通費、宿舎費)も別途かかる。
そもそも本土から遠く、文化も気候も商習慣も全然違う「離島」です。当然排他的な面もありますし、役場の人間、政治家、建設業者…島の人たちをうまく巻き込まないと物事が回りません。日本の法律が通じるとはいっても、実際の運用はある意味東南アジア的。本州や九州とは事情が大きく異なります。
もっとも、私たち個人投資家レベルでは大型リゾート開発ではなく、せいぜい単体のアパマンや簡易宿所を建てるレベルの話でしょうから、上記の苦労はしなくて良いのかもしれません。むしろ問題になるのは、「利回りが出るかどうか?」…現時点で頭の痛いのが「建設費高騰」の問題です。
・台風が強烈な沖縄の住まいは、RC造が一般的。今は職人不足と需要増で全国的にRC建設コストが高騰中。
・石垣島ではコンクリートカルテルがあり、資材の仕入れコストが本土に輪をかけて高騰している。
・木造住宅も徐々に増えては来たが、木材を沖縄本島から船で400km運ぶことになるので、建築の坪単価が本土の3割増し位になる。
いまの石垣島、需要面は申し分ありません。住む家が足りないので家賃は高止まり、地元の方々も安い月給ですが共稼ぎして一生懸命家賃払います。お金持ちな本土の移住者も相当数来ていて、東京横浜並みの家賃払って借ります。国防関係の方々も空いた家が出ればすぐ借ります…賃貸住宅の供給不足が続く限り、家賃水準は落ちないでしょう。
しかし、「東京横浜並みの現状家賃」を前提にして事業計画を建てても、建築費を相当抑えてうまくプランニングしない限り、新築しても利回りグロス6%台とか、面白くない数字になってしまいがちなのです。
そんななか頭をしぼって、「8%以上の利回りが得られて、ちゃんと遠隔運用できて、本土の人間でも融資ひける収益物件」をつくるのが、私の使命だと思っています。8%回る物件をつくれれば、離島という「最強の参入障壁」のおかげでライバル物件が増えそうもないし、需要は落ちそうにないし、少なくとも10年くらいは安定して回る気がします。安定稼働している間に売ればキャピタル取れるかもしれない!すげーやりたい。自分がオーナーになるのが一番おいしいじゃん!
ご愛読ありがとうございます。石垣の海より愛をこめて…