【ブログ】デトロイト不動産の風評被害と投資チャンス

こんにちは、国際不動産エージェント鈴木です。
 
「風評被害」という言葉、最近よく聞きますね。今年(2018年)の日本は各地で自然災害が頻発し、酷く被災した場所のショッキングな映像がマスメディアやネットを通じて瞬時に拡散されました。でも自然災害の常として、被災地近くても全く無傷な場所も多いわけで、特にそこが観光地だったりすると客足が途絶えて旅館業者も土産物屋も飲食店もタクシー業者もメシの食い上げになって困る、それが「風評被害」といわれるものですね。
記憶に新しいところだと、今年7月の西日本豪雨で岡山県倉敷市真備町が河川氾濫で大規模浸水したニュースが全国・全世界に向けて流れましたが、同じ倉敷の地名を冠した観光地「美観地区」は全く無傷だったようです。でも、岡山県外に住んでる人が倉敷の詳しい地理など普通知りませんし、浸水のこわい映像を散々見てビビッてますから、「あの辺」に行くのはやめよう、ということになり…結果的に倉敷美観地区の観光で生活している人たちが一気に困ったわけです。ネットやTV映像等メディアの発達に比べて人間の認知なんて極めて不完全なですから、今の時代、風評被害が起こるのは避けられないですね。
この「風評被害」は、不動産に対しても起こります。2011年、東日本大震災に伴う福島原発事故の影響で、関東内で放射性物質が近隣地域より多く降下した千葉県東葛地域がメディアに「名指し」され、「放射能ホットスポット」などと呼ばれて散々拡散された結果、同地域の不動産が一時的に売れなくなり、数か月にわたって人口減に見舞われた事例がありました(余談ですが、あのタイミングで、東京通勤圏として資産価値ある柏市や流山市あたりで放射能問題を懸念した不動産の投げ売りが出たら、それをパッと買いにいくのがプロの技ですよね)。
 
海外でも、「不動産風評被害」は当然あります。例えばリーマンショックの影響で、2009年に倒産・国有化されたGM(ゼネラルモーターズ)、その本社のある米国ミシガン州デトロイトでは失業者が増え、不動産価格が暴落しました。GMは米国政府が助けるかたちで決着しましたが、現地ではその後もいろんなドラマがあり、2013年にはデトロイト市が連邦破産法9条の適用を申請し、事実上の財政破綻になったニュースが全米・全世界に流されました。
地域経済の混乱に乗じて、デトロイト周辺ではいろんな不動産業者が暗躍しました。真面目な業者も多いですが、中には、「デトロイト不動産をネタに、2~3年でがっつり大儲けして人生一丁あがりたい」と考える、(私たち投資家からみれば)不届きな輩も多かったのです。彼らが典型的に手がけたのが、「ほとんど無価値の物件をタダ同然で仕入れて、数万ドルの利益乗せて、事情を知らない州外・国外の投資家に売っちゃう」という、右から左への横流しビジネス。
その一部に日本人の業者が絡んで、結果的に、日本の投資家が少なくとも数百名のオーダーで被害に遭い、裁判沙汰にもなってますが、実はそれを数十倍~数百倍する規模で、「アメリカ人がアメリカ人を騙す」事象が起こりました。加えて、廃墟になったり燃えて黒焦げになった現地住宅の映像も大いに拡散された結果、「デトロイト」の名前は、アメリカ人不動産投資家の間でも今でもネガティブイメージが支配的。
 
でも、よく考えれば (下記はWikiを調べれば5分でわかることです…)
・デトロイト都市圏の人口は、アメリカ領内だけで約430万人もいる(カナダも含めると600万人近い)
・うちデトロイト市の人口は、70万人に満たない
・つまり、所謂「デトロイト地域」に住む人間の大部分は、Oakland CountyとかMacomb Countyといった「郊外ベッドタウン」の住人
・財政破綻したのは、圏域人口400万人超の20%に満たない「デトロイト市」のみ
・郊外ベッドタウン各市で財政破綻の話はない
 
デトロイト都市圏の地図(デトロイト市は面積・人口とも全体のなかのごく一部)
※)市域人口70万人のデトロイト市だけをもって都市圏人口430万人のデトロイト圏全体を語ることは、大阪市(270万人)をもって関西全体(1500万人)を語るのと似たようなものです。その議論には「芦屋」も「北摂」も「神戸北野」も「奈良の学園前」も出てきません。どこも「大阪市内」以外だからです。

 
「デトロイトがやばい」という世間一般のイメージは、基本的に無傷な郊外ベッドタウンからみれば「風評被害」に他なりません。数週間前、私はデトロイトと郊外を分ける「8マイルロード」(ここ以北が郊外、以南が市内)の、ちょっと北側のFerndale、Hazel Park等のエリアで不動産視察しましたが、「すげー安全じゃん!」、「住宅街の緑がとてもきれい!」、「お店もたくさんあって便利!」、やばい感じは全くありませんでした。アメリカの都市って大抵どこでも、治安最悪でやばいエリアと、ものすごく平和で安全なエリアの両方がありますが、デトロイト圏もその意味で「フツーのアメリカの街」だったわけです。
でもって、デトロイト圏の郊外は、必ずしもデトロイト市内の経済・雇用に依存しているわけではありません。むしろ逆で、SouthFieldという地域はデトロイト都心と並ぶビジネス集中地区になってますし、Warrenというエリアも巨大なGMサポートセンターができたり大学が集中するエリアがあったりします。
 
下の画像は、デトロイト現地の管理会社からいただいた、デトロイト市内の治安マップですが、市内でも安全な場所とそうでない場所、いろいろあります。
・黄色:治安的に全く問題ないエリア(Aグレード)
・紫:黄色に準ずる、だいたい安全なエリア(Bグレード)
・赤:治安がフツーか、やや問題あるエリア(Cグレード)
・白:手出ししない方が良いエリア(Stay away Area)

 
この写真には「8マイルロード以北の郊外」が含まれていませんが、聞くと、「郊外は、基本どこも黄色(Aグレード、最も安全)だよ」と言ってました。
 
そういう、治安上も雇用面も問題ないエリアの不動産価格が、「デトロイト風評被害」の影響で、適正価格より安いまま放置されているのだとすれば、それは投資のチャンスなのかもしれません。アメリカ人の投資仲間も言ってました。「いまアメリカの都市圏ではどこも価格上がってしまい、安いのはデトロイト圏くらいしか残ってないから、俺は買いに行く」と…。
 
実際に、デトロイト郊外の私が滞在したエリアは、「夜ひとりで出歩いても平気」なくらい平和でした。
このエリアで中古の戸建は10~20万ドル台でしょうか。値上がり中。

 
30万ドル位の新築戸建住宅も建つし、普通にちゃんとしたエリアです。

 
 
少し足を延ばせば、湖畔のレストラン、夕陽のきれいなドライブロードもあります。デトロイト近郊、良い場所です。


 

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